キムタクがギターを始める
16歳の木村拓哉は、お年玉でギターを買うことを決意した。しかし、岡本健一に「お年玉で何を買うの?」と聞かれ「ギター」と答えると、岡本がギターをプレゼントしてくれた。
お年玉を減らさずしてギターを手に入れた木村少年は正月早々練習を開始する。
16歳の木村拓哉は、お年玉でギターを買うことを決意した。しかし、岡本健一に「お年玉で何を買うの?」と聞かれ「ギター」と答えると、岡本がギターをプレゼントしてくれた。
お年玉を減らさずしてギターを手に入れた木村少年は正月早々練習を開始する。
年明け、16歳の木村拓哉はお年玉の使い道について考えていた。考えた結果、芸の幅を広げることを決意する。そこに男闘呼組のギタリスト岡本健一が通りかかる。
「お年玉で何買うの?」
聞かれた木村は、
「ギター」
と答えた。
すると岡本は一度姿を消して、再び現れるやギターをプレゼントしてくれた。
彼がギターと出会った瞬間である。しかもお年玉を減らさずに。木村拓哉がギターを弾き始めるということは、単に一人のタレントが演奏もできるようになるということではない。ここにおけるギターは結果的にはだが一人のスター候補生を実際に国民的スターダムへと押し上げるためのイニシエーションだった。とすれば木村とギターの邂逅はテレビ史にとっても芸能史にとっても大切な瞬間だったといえるだろう。いやあるいは全然そうでなく、あのキムタクのことだからギター無しでも全く同一のキムタクだったかもしれないが。
木村拓哉は1987(昭和62)年11月にジャニーズ事務所に入所し、光GENJIのバックを務める『スケートボーイズ』の一員となる。そして1988(昭和63)年4月に、スケートボーイズから選抜された六人から成る『SMAP』のメンバーとなった。SMAPがCDデビューをするのは1991(平成3)年のことだから、まだデビューを控えたアイドルの一人に過ぎなかった。
また、木村はこのとき千葉県の高校一年生である。のちにマツコ・デラックスと高校のクラスメイトになるが、それは木村が二年生で東京の代々木高校に転校したあとのこと。木村はまだデビューできるかどうかも分からないダンサーでありシンガーであり、東京からすこし離れたところに住み、正月にお年玉の使い道の思案でわくわくする男の子である。のちにそうなることになるあの芸能界の真ん中の木村拓哉では全然ない。
この正月、同じ事務所の先輩であり、数日前の『日本レコード大賞』において大賞に輝いた男闘呼組のギタリスト岡本健一から、「お年玉で何を買うの?」とたずねられた。岡本は、木村がのちに語ったところによると自身が服装や髪型といったファッションにおいて最も影響を受ける人物である。木村は元々、この16歳の年にギターを始めたいと思っていた。そこで、お年玉でギターを買おうと思っていると答えたところ、それならばと岡本が自身のギターをプレゼントしてくれた。ちなみに木村はのちに、この時のエピソードを語りつつ後輩の河合郁人にギターをプレゼントしている。